本年度は、各種リン酸カルシウムターゲットによるスパッタコーティング膜の結晶相の同定及び、新たな消臭膜の可能性として、TiO2/DLC膜についても消臭性評価を行った。 各種リン酸カルシウムターゲットによるスパッタリングでは、第4リン酸カルシウム(TTCP)、第3リン酸カルシウム(TCP)、第2リン酸カルシウム(CPP)、第1リン酸カルシウム(CMP)をターゲットとして用い、コーティング後、膜のみを粉末として取り出し、XRDにより分析を行った。その結果、第4リン酸カルシウム(TTCP)、HA、B第三リン酸カルシウム(B-TCP)ターゲットでは、コーティング層結晶相は、CaO、HA、B-TCPから成り、TTCPターゲットにおいて、最もHA相が多いことがわかった。これに対し、第二リン酸カルシウム(B-CPP)ではB-TCP相が最も多く、第一リン酸カルシウム(B-CMP)ターゲットでは、B-CMP相が最も多くなった。リン酸カルシウムの結晶相の違いによる臭気の選択性は、平成16年度 文部科学省科学研究費 若手研究(B)「スパッタリング技術を用いたハイドロキシアパタイト薄膜の消臭機能」で明らかになっており、HAがホルムアルデヒド系ガスの吸着に優れ、B-TCPは硫黄を含むアリシン系ガスに吸着能が高いことが明らかとなっているため、ターゲットの制御により、効果的な消臭性能を持つ薄膜の作製が可能であることは示唆された。また、TiO2/DLC複合膜においては、エチレン臭に対して、膜の付加により7%の防臭性効果と、25%消臭性効果が認められた。
|