研究概要 |
平成19年度は4月に千葉大学柏の葉キャンパス内に竣工された4棟のケミレスタウン戸建型実証実験棟において4回(4,6,9,1月)にわたり24時間アクティブサンプリングによる室内空気捕集をし,116の化学物質について室内空気中の濃度の測定を実施した。この測定により,実証実験棟は厚労省の指針値のある13物質について指針値の1/10をほとんどクリアしていることが明らかになった。そのうえで,ボランティアによるQEESI試験や短時間滞在での体感評価試験を行って滞在前後での自覚症状の調査を実施し,室内の空気質と症状の発現の関係を調査した。これらの実証実験により,個人により感じ方や症状の発現はそれぞれ違い,反応する化学物質も違うということが推察され,シックハウス症候群の原因となる物質を特定することは難しいことがわかったが,反面,TVOC(総揮発性有機化合物)の量が少なくなれば,症状の発現も少なくなってくるということ,また,化学物質に対して感受性が高いと疑われる人はそうでない人よりもTVOCの濃度によって症状の発現が増減する傾向があるということが明らかになったことから,室内の空気中の化学物質を低減し,環境を改善させることによってシックハウス症候群の発症をある程度減少させることができるということがわかった。 室内空気中の化学物質については,4回の測定の比較、検討および発生源の特定調査をすすめ,実証実験棟のリフォームなど改善をはかり,シックハウスをひきおこしにくい居室ユニットの実現にむけて調査が進行している。また,12月には公共の施設,学校教室、図書館、病院、事務所等を想定した実証実験施設が竣工し,戸建型の施設と同じように116物質の化学物質について空気測定を開始し,什器搬入前と後でのデータの比較などを行い,公共施設におけるモデルも構築し始めた。
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