Pseudomonas sp.61-3のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)重合酵素遺伝子を用い、重合酵素の基質となるモノマー供給系を代謝制御工学的に調節することにより様々な物性を有するPHAの創製が可能となったが、最良なセルフクローニング系組換え株でもPHAの蓄積率は50%程度であった。そのため、PHA生合成関連遺伝子を詳細に解析することによりPHA生産システムの開発と実用化を目指した。本菌には2つのPHA生合成遺伝子クラスター(phaおよびphb)が存在し、phb locus上に見出された推定の機能不明遺伝子(ORF)について、RT-PCR、ORF破壊株の作製、ORFを異種および同種宿主に導入した組換え株の作製などを行い、その機能について考察した。ORFは栄養豊富な培地や窒素源を制限した培地(PHA蓄積条件)の対数増殖期に転写された。ORFの推定翻訳産物はα/βヒドロラーゼドメインを有することから、異種及び同種宿主へORFを導入し、それら組換え菌のPHA合成能について調べ、ORF翻訳産物のin vivoでのPHA重合酵素活性を検討した。その結果、ORFはPHA重合酵素遺伝子ではないと結論した。一方、Pseudomonas sp.61-3のセルフクローニング系の組換え株により物性の優れた共重合ポリエステルP(3HB-co-3HA)を合成するが、さらに蓄積率を向上させるため、多コピーベクターpBBR1MCS-2を用いた組換え株を作製したところ、従来のものと比べて、遺伝子発現に用いるプロモーターの種類によってPHA蓄積率とそのモノマー組成比の違いがみられ、PHA蓄積率が向上した組換え株もあったが、一般にはPHA蓄積率の増加はみられず、PHA鎖中の3HB分率が低下する傾向があった。
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