光通信デバイスへの応用が期待されている新規材料にフォトニック結晶がある。フォトニック結晶は光の波長程度の周期構造を有し、特定の波長領域の光に対する禁制帯を持つため、結晶内に制御された欠陥を導入すると、光を曲げたり、特定波長の光のみを取り出すことができ、光導波路としての応用が可能である。現在、低コスト・低エネルギーな作製方法である単分散性コロイド粒子の自己組織化法が注目されているが、得られる結晶には望まない欠陥が多数存在する。フォトニック結晶の光導波路への応用を考えた場合に、結晶内での不必要な欠陥は光の伝搬の妨げとなる。そこで本年度は、比較的大面積で質の高い結晶が得られるとされる基板引き上げ法を用いて、無欠陥な3次元の粒子膜の作製を試みた。 ポリスチレンのコロイド粒子膜の最適化を行った結果、数百ミクロンサイズまで結晶領域を拡大できたが、それ以上は大きくならなかった。ポリスチレン粒子のような有機高分子系の粒子では、水分散系においてわずかではあるが膨潤し、その乾燥過程でクラックが多く発生すると考えられる。そこで、粒子自体の密度が高く、膨潤しない無機系粒子のシリカ(SiO_2)粒子を用いて粒子膜の作製を行った。その結果、横方向のクラックの解消に成功し、ドメインサイズで表すと、Agarose添加系では5mm×0.5mmの領域が得ることができた。 クラックが生じる原因を調べるため、粒子膜の形成過程を光学顕微鏡で観測した。その結果、まず初めに縦方向のクラックが一斉に形成され、続いて縦のクラックにほぼ垂直な横方向のクラックが生じドメインが形成され、その後溶媒が蒸発して粒子の結晶化が起こることが明らかとなった。粒子膜のクラックを抑制するには、最初に発生する縦方向のクラックを制御する必要がある。そこで、次年度は縦方向のクラック間隔に合わせてキャピラリーを配置し、それを基板とした粒子膜の作製について検討する。
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