研究概要 |
本研究は,層状酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu20y(BSCCO)に内在するナノ構造におけるスピン伝導に関連した量子輸送を制御・利用する超伝導スピントロニクスの創製を目指すものであり,本年度は,微小磁性体/固有ジョセフソン接合超格子ハイブリッド素子の作製し,そのスピン注入効果について調べた。得られた成果を以下に示す。 1)微小磁性体/固有ジョセフソン接合超格子ハイブリッド素子の作製 面積が9μm2並びに25Fm2のCo/Au/BSCCOメサ構造からなる試料を再現性良く.作製することに成功した。作製した試料の無磁場における電流一電圧特性並びにその温度依存性は,BSCCO固有ジョセフソン接合単体の特性と同様であり,作製プロセスによる特性劣化がないことを確認した。 2)固有ジョセフソン接合におけるスピン注入効果 作製した試料の臨界電流の磁場依存性は,印加磁場の掃引方向に依存してヒステリシスを示すとともに,Coの磁化がゼロになる磁場で臨界電流が最大になることが観測され,スピン注入効果により固有ジョセフソン接合の臨界電流が変化することを明らかにした。また,同試料のゼロバイアス抵抗においてもCoの磁気特性に対応した磁場依存性を観測することに成功した。 以上の結果は,固有ジョセフソン接合におけるスピン輸送特性についての重要な知見であり,固有ジョセフソン接合を用いた新規なスピンデバイス応用の可能性を示すものである。
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