研究課題
昨年度は、鉄(Fe)テープポルフィリンについて、一酸化炭素、一酸化窒素、酸素分子の吸着特性を調べた。今年度は、テープポルフィリンの中心遷移金属元素の依存性を調査するため、新たに、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)テープポルフィリンへの一酸化窒素分子(NO)の吸着について、密度汎関数理論にもとづく第一原理計算を援用して調査した。以下にその結果の概要を示す。吸着エネルギーは、Co、Fe、Mnテープポルフィリンの順に大きくなり、それぞれ1.718eV、1.719eV、1.736eVであった。その吸着構造は、いずれもNO分子のN原子側をテープポルフィリンの中心遷移金属原子Mへ向け吸着する構造であった。安定吸着構造時のM-N-O角(中心金属M、一酸化窒素分子の窒素原子N、同酸素原子Oのなす角)の大きさは、Co-N-O(123°)<Fe-N-O(148°)<Mn-N-O(180°)の順であった。これらは、NO分子のπ*軌道と結合するポルフィリン中心遷移金属のd軌道の違いに起因することがわかった。関与するd軌道は、ポルフィリン分子面をXY、垂直方向をZ方向として、Mnの場合は、d x zおよびd y z軌道、Coの場合はd z z軌道であった。電気伝導性に関しては、Feの場合、NO吸着により金属から絶縁体へ変化したが、Mnでは、伝導性の減少にとどまり、絶縁体へは変化しなかった。なお、Coの場合は吸着前から絶縁体であり変化は生じない。
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Physical Review B, Vol. 77, No. 19, pp. 195307(2008) 77-19
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