研究概要 |
分子性架橋の機能性調査として、昨年度、Co、Fe、Mnテープポルフィリンの電子物性および、それぞれのNO吸着特性を、第一原理計算を援用して調査してきた。これら分子性架橋の構造、電気伝導性、磁性に関する調査を系統的に補完するため、本年度はNi、Cu, Znテープポルフィリンについて調査を行った。以下にその結果の概要を記す。 NO吸着前のNi、Cu, Znテープポルフィリンは、半導体でこの順でバンドギャップは小さくなりZnでOになる。各金属原子の3d状態は、フェルミレベルよりかなり低い(~5eV)ため、NO吸着への寄与は小さく、吸着エネルギーは数百meVと物理吸着程度、吸着構造は、Nを金属原子に向け、金属の3d軌道とNO分子のπ*軌道の混成に由来する異方性は現れず、分子軸はテープ面に垂直であった。電気伝導性および磁性へのNO吸着の影響は、Ni、Cuでは大きく、吸着によりNiでは電気伝導体へ、Cuではハーフメタルへ変化した。Znではわずかに(0.04eV)バンドギャップが開いたのみである。昨年度からのデータと併せて金属テープポルフィリンを用いた分子性架橋の機能性デザインの知見として金属元素依存性によるガス分子吸着特性を把握できた。 また、伝導電子系の中の複数磁性金属原子の局在電子スピンが引き起こす多体効果についても、別途調査済みで、第一原理計算の研究成果を補完して分子性架橋のデザイン指針に関する知見を得ることができた。 さらに、デザインバリエーションを増やす為、カーボンナノチューブ系、グラフェン系へのガス分子の吸着特性も調査した。これらは、分子性架橋の機能性と同時に架橋分子と電極との接合部のデザインに活用できる。
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