研究概要 |
本研究では,X線光電子分光法(XPS)を用いて,マトリックス中に埋め込まれたナノメートルサイズさらにはサブナノメートルサイズの超微粒子(以降それぞれ,「ナノ粒子」および「サブナノ粒子」とよぶ)のスペクトルを計測し,ナノ・サブナノ粒子特有のスペクトル形状から,深さ方向に対して,迅速かつ正確に,それらの粒子のサイズおよび粒子の存在状態(粒子と粒子周囲の欠陥との相互作用など)を評価する方法を確立することを目的とする。19年度では,種々の基板上に分散した均一サイズのナノ・サブナノ粒子をX線光電子分光法により系統的に分析し,内殻準位結合エネルギーおよびスピン・軌道分裂幅と粒子サイズの相関関係を検討し,それらの関係について経験式をつくることを目標とした。 ナノ粒子が基板上に生成される場合,その成長過程は基板表面の欠陥に大きく影響されることに着目した。イオン照射によりグラファイト上およびフラーレン薄膜上に欠陥を生成することで,種々の欠陥密度を有する基板を用意し,その基板上に,スパッタ蒸着法を用いてAuまたはPtナノ・サブナノ粒子を作製した。次に,それらのXPS内殻準位および価電子帯スペクトルを計測した。その結果,以下の成果1〜3を得ることができた。 1.Au 4f内殻準位スペクトルから,未照射基板上では1.6-17nmのAuナノ粒子が生成し,照射基板上では0.6-8.2nmのAuナノ粒子が生成することが分かった。 2.Ptナノ粒子についても,照射基板上の方がより微小なナノ粒子が生成した。 3.未照射および照射基板を用いて,広いサイズ範囲のAuナノ粒子に対して,平均粒子サイズとXPS 5dスペクトル幅の関係式を導き出すことができた。 次年度において,成果3の関係式をマトリックス中に埋め込まれたナノ・サブナノ粒子に適用し,それらのキャラクタリゼーションを行う。
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