研究概要 |
本研究の目的は、様々な生体分子、特に生体機能分子であるタンパク質を対象に単分子レベルでその温度条件による反応および分子問相互作用を調べ、さらに分子の構造や反応機構、ダイナミクスを明らかにすることを目指して、その新しい手法として単分子の熱力学的反応計測用センサーおよび温度可変ソースとしで"シリコンおよび金属ナノワイヤーのヒーター"を製作、評価する研究である。 実際ナノワイヤーの温度測定を行うため、既存のEBリソグラフィー装置を用いて金属ナノワイヤーを製作し、その上に量子ドットを固定させ、温度変化によって変わる量子ドットからの蛍光スペクトルのマッピングにより温度分布の領域を検出した。量子ドットからのプォトブリーチング現象や安定性に問題が発生して、蛍光性色素であるローダミンBを用いてナノワイヤーの温度分布の計測を行う実験に取り組んでより安定で金属ナノワイヤーの温度分布マッピング(25度より90度レベルにて5度程度の分解能)に成功した。 一方、量子ドットによるナノヒーターの温度分布計測だけではなく、既存のSThMによる、ナノヒーターの温度計測を行い、ナノ領域にて温度計測及び熱伝導特性を評価した。さらに安価でかつハイスループットの単結晶シリコンのナノワイヤーを製作し、作製したナノワイヤーをヒートソースとして利用するため、その温度制御ができることを確認した。特に今年度には、気中環境下の計測だけではなく、液中でのナノワイヤー温度計測を行った。液中環境下の実験ではシリコンナノワイヤは溶液中にさらされるため,ローダミンBの溶液中での温度上昇による拡散を防ぐために,ローダミンBはシリコンナノワイヤ表面上に安定した状態で固定されなければならない。そこでローダミンBのみを単体で直接的に固定せず,ビオチン(biotin)-ストレプトアビジン(streptavidin)間の結合を利用して間接的にローダミンBをシリコンナノワイヤ表面上に取り付ける手法を用いた。今後、シリコンナノワイヤーの上に表面処理を行い生体分子・たんぱく質などを固定し、上記の実験で調べたナノヒーターの温度条件とともに、その蛋白質の温度変化による反応を調査する予定である。
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