オリジナル・マイクロリアクターをインクジェットプリンターで作製する技術の開発を目的として、本研究を行った。本年度は、水を流せる流路の作製方法について詳細に検討した。具体的には、インクジェットプリンターに用いるインク(アルコール類をインクとして用いた)の種類、ガラス板の表面粗さ、流路の深さおよび幅、流路への注水の速度などについて、最適な条件を求めるべく詳細な実験を行った。その結果、幅が250ミクロン程度の細い流路を作製できる条件が求められた。これによって、マイクロ化学チップの利点のひとつである「微小な化学反応場での反応」を、本研究のマイクロリアクターでも行う事が出来るはずである。 また、水だけでなく有機溶媒も流せるようにするため、インクの種類、ガラス板表面の性質(疎水性、撥油性)などについて最適な条件を探した。まだ、ベストな条件に絞り込めてはいないが、一応、極性の高い有機溶媒(ニトロベンゼン)を流せる流路の作製には成功した。ニトロベンゼンは非水溶性なので、水/有機溶媒からなる2相系へと発展させる事が今後可能と考えられる。2相系が実現できれば、水洗や抽出など、化学工学的に重要な単位操作が本研究のマイクロリアクターでも行えるようになるはずである。 その他、定常的に流路に水を流す方法についても検討し、幅1mm、深さ100ミクロン、長さ5cmの流路に、50μL/minの流速で総量1mLの水を流す事も出来た。これにより、連続的な反応系の構築が可能になる。
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