研究課題
本研究は、パイロポリマーと呼ばれるカーボン材料をMEMSチップ上に導入し、新たなMEMSの可能性を開拓・展開することを研究目的とし、これまでの基礎研究の成果を、本研究においてさらに発展、展開することをねらっている。本年度は、現在応用検討を進めている課題について、応用展開の可能性の検討を行い、パイロポリマーMEMSのもつ利点:1)カーボン材料としての特徴、2)複雑なマイクロ・ナノ微細構造の特徴、を活かすことを重視し、必要な基礎研究を並行して進めた。応用検討課題としては、特に電気化学電極を焦点を当てた。電気化学電極としての利用可能性を検証するために、パリレンCを900度で熱処理したパイロポリマー薄膜について、電気化学特性を評価したところ、明確な酸化還元ピークを示すことが確認できた。膜厚によらずこの酸化還元ピークが確認できた。検証実験の結果、十分電気化学電極として利用が可能であるとみている。さらには、本研究の特徴とするMEMS技術との融合(複雑なマイクロ・ナノ微細構造の特徴を活かす)の観点から、加工技術の可能性拡張のために、ナノ加工技術の導入にも挑戦し、ナノ細線アレイによる電気化学電極の形成にも取り組んだ。線幅450nm、線中心間距離15nmの細線アレイにより、単純な薄膜電極より高いS/Nをもつ電極の実現に成功した。並行して実施した基礎研究の一環として、チップ上の炭素化温度限界を拡張することについても取り組んだ。パイロポリマーのヒーター構造を低温処理で形成し、ヒーターの自己過熱により局所的な温度上昇を可能とした。また、この自己加熱温度の評価および生成材料の特性評価を対応させることにより1700度程度の加熱が実現できていることがわかった。炭化限界温度の拡張は応用の可能性を広ゲルことにつながる成果であり、今後、利用を検討していく予定である。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Sensors and Materials Vol.19,No.7
ページ: 405-415
電気学会論文誌E Vol.127,No.4
ページ: 228-233