本年度は、協力ゲーム的意思決定の状況において、提携形成過程における、 (1) 「コミュニケーションにおける空間的制約」(つまり、全てのプレイヤー(属性)がそれぞれにコミュニケーションを取れるわけではない場合。多基準意思決定問題においては、全ての基準を同時に考慮できるとは限らない場合に対応) (2) 「各プレイヤーの立場・特性」(上下関係、従属関係などの順序関係・依存関係などの非対称性が存在する場合。多基準意思決定問題においては、評価基準(属性)の問のトレードオフや依存関係ならびに優先順位等に対応) を考慮したモデルを提案した。具体的には、提携の集合に、コミュニケーションネットワークにより導かれるポセットの構造を入れ、そのポセット上の関数としてプレイヤーの利得構造を表現するモデルを提案した。束構造を仮定しない組み合わせ構造上でのゲームの表現はこれまでの国内外における研究において、例を見ないものである。また、通常の協力ゲーム、提携制約のある協力ゲームにおける既存の種々の解概念・配分ルール(シャープレイ値、マイヤーソン値等)に対して、このモデルを通した自然な解釈を与えた。これらの解釈を一般化する形で、コミュニケーション制約下における新たな1つの解概念・配分ルールを提案した。ここで、提案された解概念は、コミュニケーション制約下においてこれまで提案されてきた解概念らがさらされてきているほぼ全ての批判に対して耐えうる解概念となっている。
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