研究概要 |
今年度は,べ一スとなる理論的枠組みの構築を行い,(1)最小分散ヘッジによる流動性資産を用いた非流動性資産デリバティブのヘッジ,および(2)リスクの市場価格ノルム最小化等価マルチンゲール測度を用いた非流動性資産デリバティブの価格付け手法の提案を行った. (1)については,市場を流動性の高い資産によって構成される完備市場と非流動的な資産の市場に分け,非流動的な資産に対するデリバティブを流動的な資産でヘッジする手法を開発した.具体的には,最小ヘッジ問題を非流動性資産デリバティブの完備市場への最適な直行射影を求める問題に帰着させ,その直行射影によって与えられる確率変数を動的ヘッジ手法で複製する手法を提案した.また,直行射影の近似に加法モデルを用いることにより,効率的な計算手法を示した. (2)については,流動的資産と非流動的資産のダイナミクスを多次元状態空間モデルとして表現し,無裁定の下,リスクの市場価格をノルム最小化によって求める手法を提案した.また,このようにして設計したリスク中立確率測度が,最小エントロピーマルチンゲール測度を与えることを示した.最終年度は,これらの結果を統合し,実データを用いた検証を行うことが課題として上げられる.
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