研究概要 |
本研究は,原資産が市場取引されていない(もしくは流動性が低い)ケースに対する派生証券を「非流動性資産デリバティブ」と定義した上で,保険・エネルギー・天候・事業価値評価など,原資産が異なる非流動性資産デリバティブ問題を統一的に取り扱うための理論モデルの構築と,実データを用いた検証を行うことを目的とするものである.まず,非流動性資産デリバティブのベンチマークとして,天候デリバティブに対し,気温を対象とした市場取引に有効な価格付け手法,および,風力発電事業に対する新たな天候デリバティブの構築を行った.また,風況予測誤差に基づく新しい天候デリバティブを提案し,そのヘッジ効果を実際のデータを用いて統計的に実証した.つぎに,ベースとなる理論的枠組みの構築を行い,流動性資産を用いた最小分散ヘッジによる非流動性資産デリバティブのヘッジ,およびリスクの市場価格ノルム最小化マルチンゲール測度を用いた非流動性資産デリバティブの価格付け手法の提案を行った.さらに,提案したヘッジ手法の有効性を示すため,実務応用への適用について検討し,株式インデックスを非流動性資産として,流動性の高い少数資産でヘッジする手法を構築した.また,最小分散ヘッジの考え方をポートフォリオ最適化に適用することにより,共和分する資産の組み合わせに対するポートフォリオの最適化手法を構築し,その有効性を検証した.
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