研究概要 |
生産と販売が競合するサプライチェインを考察する.生産者は卸売価格と引き取り価格を決定する.販売者はその価格を知った上で自己の利益を最適にするように販売価格,仕入れ量を決定する.生産者は販売者側のこの行動を知った上で自己の利益を最大にするように卸売価格等を決定する.ことモデルで引き取ったものを処理する価格が0の場合,全体の利益と,全体最適化のときの総利益の比は,需要が需要価格関数と分布にしたがう確率変数の積の形式で定まる場合,需要価格関数のみに依存し,需要分布にはよらないことがごく最近示されてきた.本研究では,処埋価格が正のばあい,需要分布に依存することが示された. 次に,販売者が複数存在する場合を考える。販売者間は互いに競合するため,販売価格はある均衡価格になることが近年知られている。本研究では,その均衡価格が唯一存在するための条件について,これまで知られている結果を拡張して示すと共に,数値計算により,処理価格,需要分布が変動するときの均衡価格や生産側の設定価格の変動を考察した。この結果,需要分布の分散が変化したとき,販売側の販売価格や仕入れ量は大きく変動するのに対し,生産側の最適な設定価格は需要分布によってわずかに変動するものの,頑健であることが示された。生産側は,販売価格の変化による期待値の変動のみに注意して販売価格を決定すればよいことを意味している。また,販売価格が販売者間の競合により低下することにより,全体最適となるような販売価格に近づくため,結果として生産,販売の利益の総和は,販売者が一人の時に比べて全体最適のときの総期待利益に近づくことが示された。
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