嫌悪施設立地による資産価値低下リスクの補償を、不動産デリバティブを用いて効率的に行うスキームを構築するため、本研究は次の3点について明らかにすることを目的としている。 1、リスク評価方法の実証:将来の資産価値の確率分布に基づくリスク評価手法が、複数地域においても適用可能であることを実証するとともに、地域間での違いを明らかにする。 2、不動産デリバティブ市場の現状と展望:英国市場を調査して、参加者・取引内容・取引規模・用いられる技術などを明らかにし、補償効率化のために活用可能なデリバティブを検討する。 3、補償スキームの構築:研究目的1及び2の結果に基づき可能な補償スキームを提示して、補償額の軽減面と補償を行う側のリスク管理面における効果を評価するとともに、ヒアリング調査によりその実現可能性を検討する。 上記研究目的(1) について、平成21年度は、リスク評価と補償の社会的意義やその方法、そして首都圏における試算結果などに関する研究成果を拙著「嫌悪施設の立地問題-環境リスクと公正性-」としてまとめ、刊行した。(2) については、効率的な補償を可能にするデリバティブを提案し、その価値評価方法と試算結果を研究論文としてまとめ、学術誌に投稿した(現時点ではまだ審査中である)。(3)については、ヒアリング調査の対象となり得る複数の主体と、これまでの研究成果を示した意見交換を実施して、ヒアリング対象の選定と調査項目の検討を行って、平成22年度に行う本調査の準備とした。
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