研究概要 |
最終年度となる本年度は,これまでに構築した勤務表作成アルゴリズムや,これを含む勤務表作成支援システムを対象に,アルゴリズムによる最適化だけでなく,勤務表作成者の作業,思考,判断をも含んだ最適化を検討した. 具体的には,本研究で構築した訪問介護勤務表作成支援システムをベースに,情報学研究所との共同研究でweb版の勤務表作成支援システムを構築し,1年間かけて,その評価と改善のために,支援システムを利用した勤務表作成作業を観察してきた.訪問介護においては,利用者の体調の変化,登録型ヘルパーの変動から,事業所(ヘルプステーション)との契約時に交わされた基本情報も看護師勤務表作成等に比べて,比較的頻繁に変更される.また,対象月だけに特定されたサービスや休みも多く,これらの変動を勤務表作成者の思考を遮らないよう違和感なく支援システムに伝えることできる流れを検討した.また,作成した勤務表に対する修正ツールや表示ツール等についても検討した.そして,支援システムに修正を重ね,本年6月前後にweb上に公開する予定である. 一方,今後の勤務表策支援システム構築において,勤務表作成者の思考,判断を助ける要素(モデル,アルゴリズム,情報)について基礎実験と検討を重ね,明らかになったことを学会やシンポジウムで発表した.大きくは,解の評価,解空間の可視化について検討し,列挙すれば膨大となるような情報をネットワーク構造に表す方法や,拘束条件間の関連の強さをネットワークで表現すること等を提案した. この他にも,ナース・スケジューリングについては,これまで最適解が見つからなかった問題に対し,充足可能性判定問題として記述して解くことにより,最適解を得ることにも成功した.また,分枝価格法の可能性や,列生成を動的計画法で解く方法についても検討し,今後発表していく予定である.
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