研究概要 |
文献や購入書籍に基づいて,建設業における労働安全に関する諸規定,ならびに労働災害発生の実例と対策などについて調査した。その結果,災害発生防止のための規定は過去の災害からの教訓を踏まえつつかなり詳細に整備されていることがわかった。しかしながら,建設業における労働災害の発生は未だに撲滅されていない現状を鑑みると,法律や規定の記述内容と実態との間には相当な乖離があることが示唆された。災害発生防止には作業現場組織おける体制の確立もさることながら,最終的には作業当事者の意識に委ねられている部分があるのではないかとも考えられることから,法律、規定や作業体制以外の請負体制や雇用形態などの外見からは顕在化しにくいソフトの部分にも問題が潜んでいるようにも思われる。 また,施工現場責任者からの聞取り調査と併せて予備実験として被験者に実際の施工現場で歩行して貰い,被験者の属性(性別・身長・年齢)、作業足場の地上からの高さ、同足場の幅を変化させ,歩行速度との関係をみた。その結果,転落などの災害発生は踏み板上の歩行においてよりも足場壁面寄りの作業,すなわち身体の重心が踏み板から壁面と踏み板との空間にある作業における場合が多いこと,歩行速度には作業者の歩行空間が無限の場合(頭上の踏み板なし)は属性による影響はないが,歩行踏み板と頭上踏み板との空間高さが一定の場合には上背があると頭上部空間が狭くなり歩行速度は減少すること,足場側面の転落防止ネットの存在は作業者への不安軽減に大きく寄与していることなどがわかった。 さら,荷物の上げ下ろし作業時の加速度測定結果に基づいてフラクタル次元の算出を行った。
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