研究概要 |
本年度は,葛飾区東四つ木地区地区を対象に,地震リスク評価を行った。 解析手順は次のとおりである。 i) 地区内の複数点の地盤柱状図を入手する。 ii) 地盤柱状図より,地盤モデルを作成する。 iii) 重複反射理論に基づく弾性解析により,地盤の固有周期の計算する。 iv) 一次元波動論に基づく等価線形解析により,1923年関東地震,建築基準法で定められたごくまれに起こるとされる地震(告示波),地震東京湾北部地震(中央防災会議)の3地震を対象に,地区内の計測震度および地表面変位応答を計算する。 その結果,以下の結論を得た。 1) ひとつの地区内でも,地盤の状況にはかなりばらつきがある。 2) 地盤固有周期は,西側では0.6秒程度であるが,東側では1秒を越える地域もあり,かなり軟弱な地盤である。 3) 計測震度は地震により異なり,関東地震で震度5弱から震度5強でもっとも小さく,次が告示波,東京湾北部地震が震度5強から震度6弱ともっとも大きい。これらの数値は既往の被害想定と比較すると小さいものであるが,その原因は局所的に極端な軟弱地盤が存在することであり,既往の想定では不十分であることが明らかとなった。 4) 東京湾北部地震における変位応答を,固有周期が0.2秒以下(鉄筋コンクリート造建物を想定),0.2~0.4秒(鉄骨造建物を想定),0.4~1.0秒(木造建物を想定)の値のそれぞれの平均値で評価したところ,鉄筋コンクリート造建物では0.1cm以下,鉄骨造では0.5cm程度,木造建物では数cmと,鉄筋コンクリート造建物の揺れは小さいが,木造建物はその数十倍の揺れになることが分かった。 以上より,東四つ木地区はかなり軟弱な地盤であるため,地震時には大きな揺れを生ずる可能性が高く,特に木造建物では大きな被害が予想される。また,地盤そのものの被害にも注意が必要で,液状化や基礎・杭の損傷も懸念される。
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