研究概要 |
本研究では,自動車運転時におけるドライバのメンタルストレスの変化を,完全な非接触で捉えるシステムの構築を目的とする.初年度は,(1)微弱なマイクロ波レーダーを送信することにより衣類等を透過し,さらに一定距離離れた位置から心拍を捉える非接触システムの設計と試作,(2)イスに着席した状態での心拍数及び心拍変動指標(Heart Rate Variability)の計測,(3)実車での計測実験,の3点を試みた. 試作した非接触計測システムは,周波数24GHz,平均出力7mWで,電波法に準拠した発信機を備えており,電波防護指針に沿った使用を心掛け設計・試作した.これを用いて心拍に伴う被験者の体表面の動きを計測するため,背部の第4肋間狭付近より数センチ離れた位置から衣服越しに心拍を観察する実験を行った.リファレンスとして同時に計測した心電図より算出した心拍数と比較したところ,すべての被験者において相関係数r=0.9以上という極めて高い相関を示した.また,不快な聴覚刺激によりメンタルストレスを与え,その間のHRVを計測する実験を行い,同じく心電図から算出したHRVと比較したところ,LFとLF/HFについては極めて似た変化を示した.このことから,マイクロ波を用いた計測方式により心拍及びHRVを完全な非接触で計測が可能であることが示された. さらに,車内で運転中のドライバの心拍を計測する実験を行ったが,自動車の振動及び運転に伴うドライバの体動の影響により心拍の取得が困難になることがわかった.その他,救急車を想定し,車内に横たわった被験者に対して同様の実験を行った結果,自動車の振動の影響が見られるものの心拍の取得については比較的良い結果が得られた.したがって,ドライバの体動により心拍取得が困難となっていることが推測された.よって,次年度はこの体動によるノイズ対策を検討することを予定している.
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