H21年度は、前年度の成果を吟味しつつ、継続して数値シミュレータの開発とその検証実験を行うとともに、衝撃波との干渉によるフライングデブリの飛散機構を調べた。 まず、計算領域境界で生じる擾乱がフライングデブリの運動に大きな影響を与えうることが明らかになったため、マルチグリッド法を新たに採用し、数値シミュレータの改良を行った。その結果、過度に計算資源を費やすことなく、大規模な計算が可能となった。 検証実験は現有の衝撃波管(幅30mm×高さ100mmの矩形断面)を用いて行った。衝撃波管の試験部には観測窓を取り付け、デブリ模型の運動および流れ場の観測を行った。試験気体には、大気中での爆発現象を想定し、空気を用いた。衝撃波管内で発生させた衝撃波と衝撃波管床面上に設置した直方体形状物体とが干渉した後に起こる物体の運動を高速度ビデオカメラ(毎秒10000フレーム)によって撮影し、軌跡や速度を解析した。実験と同様の条件で数値シミュレーションを行い、その結果を実験と比較することで、数値シミュレータの検証を行うとともに、物体の飛散に及ぼす諸因子(床面からの距離や初期姿勢)の効果の内訳を、その物理的要因毎に分離し、吟味した。その結果、床面で反射した衝撃波との再衝突が物体の姿勢の変化に、さらにはその飛散軌道に大きな影響を与えること等、新たな知見を得ることができた。これらの成果は国内外の学術講演会(4件)で発表し、当該分野における多くの研究者と議論を重ねることで、新たな課題等を明らかにすることができた。現在その成果をまとめ、学術雑誌への投稿を準備しているところである。
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