研究概要 |
POLSAR画像解析を用いた,山地帯に点在する被災住宅(人工物)群の識別のための新たな画像解析手法を開発するため,以下の研究を行った. ・偏波行列回転処理の導入による分解識別精度向上への試み 従来のPOLSAR画像解析手法の一つである散乱電力分解法では,2回反射散乱,表面散乱,体積散乱,Helix散乱の4つに受信電力を分解していた.2回反射散乱,表面散乱,体積散乱の各成分に対する展開行列は全てReflection Symmetry, Helix散乱成分に対する展開Coherency行列はRotation Symmetryとなっており,結果として各展開Coherency行列の(1,3),(3,1)成分は常にゼロとなっていた.一方,一実際にPOLSARで取得されるデータを用いた平均化Coherency行列においては,(1,3),(3,1)成分は一般にはゼロとはならない.この(1,3),(3,1)成分の扱いが原因で,特定のシーンにおいては分解精度が大幅に落ちることが本年度前半までの研究によりわかってきた. そこで本年度後半では,POLSAR実測データの平均化Coherency行列に,ユニタリ回転行列を掛けることで(1,3)(3,1)成分を強制的にゼロにする処理を追加することで,散乱電力分解法の分解精度の向上を試みた.この回転処理導入により,ある人工物群に対するターゲット識別精度の向上が実現された. しかしながら,本年度までの研究では,最適な回転角の特定方法の確立まではできなかった.今後の研究(申請中の次年度基盤研究(C)の課題)においては,より詳細な数値計算シミュレーションと伝搬暗室での実験を併用して物理散乱メカニズムを解明していき,シーン毎に適切な回転角を決定するアルゴリズムの確立を目指していく予定である.
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