研究概要 |
本研究では,巨大地震発生に伴う都市複合災害のうち,津波漂流物被害と河川遡上津波に伴う被害を対象とした.これらにより得られた20年度成果を以下に示す. 1. 津波漂流物被害に関する検討 19年度までに開発した鉛直二次元津波漂流物解析手法をベースとして,移動3方向と回転3方向の6自由度の動きが表現可能な,三次元解析手法を開発した.この手法では,漂流物を剛体として取り扱い,流体解析で求まる圧力や剪断力を用いて,刻一刻の挙動を精度よく予測するものである.開発した手法を,既往の漂流物水理実験結果と比較したところ,漂流物の挙動を定性的にも定量的にも十分な精度で再現することができた. 2. 河川遡上津波に伴う被害に関する検討 2-1 河口堰上流の塩分挙動解析 東南海・南海地震時に発生する津波の河川遡上に伴う塩分が,淀川の河口堰である淀川大堰の上流部に設置されている浄水場の取水に影響を与えることが懸念されている.そこで,塩分挙動解析手法を構築した上で,淀川から取水する浄水場の取水影響評価を行った.本研究の解析手法を用いて淀川大堰直上流に位置する柴島浄水場の取水影響評価を行ったところ,本研究で想定した河川流量(62, 198, 500, 820, 3000[m3/s])では,柴島取水口(上水)には,水質基準を超える塩分は到達しなかった.しかし,それよりも下流にある柴島取水口(工水)には,長時間にわたり水質基準を超える塩分が滞留することがわかった. 2-2 河川遡上津波挙動の三次元数値解析 津波の河川遡上時の危険度を評価するため,淀川を対象とした三次元流動解析を行った.その結果,淀川大堰には大きな波力は働かないこと,津波遡上に伴い淀川を越流する津波(塩水)の量は,平面二次元解析結果と大きく異なり,詳細な予測をするためには,三次元解析により越流挙動を評価する必要があることがわかった.
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