吹雪は積雪地域においてたびたび視程障害を引き起こし、自動車の多重衝突などの深刻な災害の原因ともなる。吹雪の時空間変動が大きいことが、その対策を難しくしている要因である。これまで、吹雪の時空間変動の連続測定が可能な測器が無いために、その変動特性には不明な点が多く残されている。前年度に吹雪の検知及び計測に音センサーを用いることの有効性が示されたことを受けて、平成20年度も防災科学技術研究所雪氷防災研究センター新庄支所にある雪氷防災実験棟を活用し、吹雪の強度と音響信号の関係を実験的に調べた。風速を変化させた実験からは、風速が12m/s以下では吹雪の質量フラックスと音響信号の分散とは比例関係にあると近似されるが、風速が12m/sを越えると比例関係からのずれが顕著になることが分かった。その原因は現在検討中であるが、音センサーに生ずる音のメカニズムとして、低風速においては音センサーへの雪粒子の衝突が大勢を占めるのに対し、高風速では風自体が発する音も大きな割合を持つためではないかと考えられる。この他、温度や雪質の条件を変化させた実験も実施した。形状が複雑な新雪と、形状が単純な粒状の雪とでは、上述の比例関係の係数が異なる傾向にあることが分かった。冬期には、吹雪発生時に音センサーを野外に設置し、雪粒子を捕捉する従来型の吹雪計との比較観測を行った。音センサーは野外においても吹雪検知・測定に有効との目途が立ったが、検証例を増やすために来年度も同様の野外観測を実施予定である。
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