研究概要 |
本研究の究極の目的は、実用的に有用なタンパクの立体構造の精密予測であり、そのために、タンパク構造を、原子レベルで精密に立体構造を予測するべき部分と、比較的ラフに予測してよい部分に分けることがさしあたりの目標となる。本研究の研究期間においては、精密に予測するべき領域を決めるために、タンパクにおけるアミノ酸間平均距離統計に基づくコンタクトマップ(これを平均距離図、Average Distance Map,ADMと呼んでいる。)及び、アミノ酸間平均距離統計から導いたアミノ酸間有効ポテンシャルによるランダム状態における残基対コンタクト頻度計算を用い、構造形成部位および構造形成においてキーとなる残基の予測を試み、実際の構造と比較・検討を行った。平成19年度においては、構造形成過程の解析(特にφ値解析)が実験的によく行われている以下のタンパクを選んだ。すなわち、グロビンファミリー、リゾチームファミリー、IgG結合ドメインである。そのうえで、まずそれぞれのファミリー内のいくつかのタンパクについて解析を行った。その結果、構造形成において重要な領域をかなり一意的に予測することが可能であることがわかった。また、グロビンファミリー、リゾチーム、IgG結合タンパクにおいて構造形成領域やキーとなる残基が予測できることがわかった。これらの予測においては、構造情報をまったく用いていないことに留意すべきである。平成20年度には、同一ファミリー内において予測サブドメイン部分の配列と構造形成部分とが一致している配列群のアラインメントを行い、まず簡単に保存残基を調べ、保存残基とその部分の立体構造との関係(疎水性パッキング形成など相互作用している残基対との関係)、構造形成のキーとなる残基の保存性などを吟味し、普遍的に適用可能な方法の確立を目指す。
|