研究概要 |
本研究の目的は、ヒト遺伝子発現を経時的にモニターできるセンサーローカスを保持した「レポーター細胞」の作製である。本年度は目的の遺伝子領域を保持するゲノムクローン(BAC)の改変およびHAC搭載の準備を進めた。実験系の妥当性を検証するためのモデルとして、発生/分化に伴う発現変動が既に報告されているHOXB4遺伝子ローカス(ヒト17番染色体長腕q21.3領域)を選んだ。米国UCSCのゲノムデータベース(Human genome browser gateway)にて検索した目的遺伝子を含むBACクローンを、遺伝子バンク(米国CHORI, BACPAC resources center;)から入手した。はじめにSTSマーカーを用いたPCR解析と制限酵素地図作製によって目的の遺伝子座を含むことを確認した。 BACクローンに対するレポーター遺伝子の導入は、大腸菌宿主におけるλ-ファージの組み換え機構を利用した"Recombineering"システムを採用した。はじめに目的のBACを宿主大腸菌(DH10B)から単離し、これを培養温度変化によって組み換え酵素の発現を誘導できる菌株DY380に導入することを試みた。薬剤耐性選択により単離した形質転換体からBACを抽出して制限酵素断片長を解析したところ、形質転換に伴うインサートDNAのrearrangeが確認された。インサート配列の内容をRepeat Maskerによって解析したところ、散在型繰り返し配列が多く含まれることが明らかになり、これがrearrangeの要因のひとつと考察された。 次年度には、BACインサート全長ではなく、目的とするHOXB4遺伝子ローカスを含む「安定な」領域を単離することを試みる。同時に第2の課題である、遺伝子上流の発現制御領域SNPがセンサーローカスの遺伝子発現変動に及ぼす影響を検証する系を構築する。
|