モデル植物シロイヌナズナは変異体リソースが充実したことにより、全ての遺伝子に関して一遺伝子破壊系統を確立すること(saturation mutagenesis)が可能となりつつある。このことによりシロイヌナズナは変異体を用いて全遺伝子の機能解析が実現可能な、多細胞生物では非常に特異なモデル生物種であると捉えることができる。これまでに様々な変異体リソースにおいて形態異常を指標とした網羅的な表現型観察が試みられた例はあるが、目視で見付けることが難しい表現型(non-visible phe notypes)まで包括的に探索している研究例はない。そこで本研究課題では、シロイヌナズナの遺伝子破壊型変異系統を用いたフェノーム解析の一端として、化合物等を用いて目視で見付けることが難しい条件的表現型解析を行うことを目的とした。各遺伝子変異体の生育環境条件によって現れる表現型の探索と変異体ラインの化合物添加による新規表現型スクリーニング系の開発を目指している。これまでに、化合物等を植物体に与えた場合に見られる表現型を網羅的に探索するために、ハイスループットな化合物応答試験の構築に向けた検定実験を行ってきた。対象としたのは植物の初期の育成段階である種子からの発芽とその後の幼苗育成に与える影響である。マルチタイタープレートでの生育の様子はスキャナーで取り込み、デジタル画像として保存している。また、画像処理作業によってプレートの各ウェル画像を切り取り、植物が生長していることを示す緑の部分の割合を抽出することによって生育状態の定量的データ化を図っている。
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