研究概要 |
我々が開発したHLA結合性ペプチド予想プログラムを活用して、以下のように研究が進んだ。 1. HLA結合性ペプチド予想プログラムを使って同定したC型肝炎ウイルスペプチドを使って愛媛大と共同で実施中の慢性C型肝炎患者を対象とした臨床第I/II相試験を行った。中間評価の段階で、大半の症例で免疫治療開始後と終了後1ヶ月間程度の血清肝酵素(AST,ALT)の低下がみられたが、血清ウイルス量の変化はみられなかった。そこで治療計画を変更し、標準治療であるRibavirin+IFN-γにペプチド免疫を併用して、ウイルス陰性化率および再発率を調べる試験治療を開始した。一方、HCVトランスジェニックマウスを用いたin viro免疫実験の結果をまとめて投稿準備中である。 2. 新たにHLA-C分子結合性ペプチドの予想プログラムを作製するため、遺伝子導入細胞の作製を1年間試みたが、細胞表面に十分な発現がある細胞を作製することができなかった。そこで、当面目的の標的蛋白質についてのみ、既存の情報から結合性ペプチドを予想し、既存のHLA-C発現細胞を使って結合実験を行った。 3. HLA-A遺伝子の進化上、ヒトとチンパンジーの分岐よりずっと古くに別れた遺伝子と、ヒト以降でごく最近に別れた遺伝子の産物であるHLA分子の組み合わせについて、網羅的な結合性ペプチドの探索を行い、それぞれのレパートリーの重なりの程度について比較を行った。その結果、HLA-A遺伝子の進化が、結合性ペプチドのレパートリーを広げる方向への選択圧を受けて、遺伝子変異を保存する方向へと進んだことが支持された。この結果をまとめて、論文準備中。
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