研究課題/領域番号 |
19510216
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松永 勇 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (00254425)
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研究分担者 |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80333532)
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30293913)
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キーワード | 酵素 / 細菌 / 脂質 / 生理活性 / マイコバクテリア / ミコール酸糖脂質 |
研究概要 |
まず、Mycobacterium aviumからfbpA、fbpB及びfbpC遺伝子を単離した。次にこれらを発現ベクターに組込み、大腸菌での発現を試みた。これらのうちfbpAについては解析に耐えうる発現量が確保できる事がわかり、SDS-PAGE上単一にまで精製できた。fbpBとfbpCは、低使用頻度コドン使用のため大腸菌での発現は悪かった。そこでまずfbpA遺伝子産物(Ag85A)の酵素学的性質を検討した。調製できた組換えAg85Aは、M.aviumのtrehalose monomycolate(TMM)を基質としてtrehalose dimycolate(TDM)を生成し、確かに機能する酵素標品が調製できたことがわかった。またこの時6位に水酸基を有する単糖を共存させると、それをhead groupにもつglycolyl monomycolateが生成するが、xyloseは基質として利用しない事がわかった。よって、Ag85Aの基質となる為には糖の6位に水酸基が必要な事が示唆された。次にAg85Aのglucoseを基質とした時の酵素反応の詳細を検討した。この酵素反応は転移されるミコール酸のドナー基質であるTMMを必ず必要とする。ここにglucoseを共存させると低濃度ではTDMが主生成物となるが、glucose濃度を増やしていくと濃度依存性にglucose monomycolate(GMM)産生が増加しTDM産生が低下した。これはミコール酸を受け取る側のアクセプター基質の競合によるのであって、菌を人工培地で培養した時の培地中のグルコース濃度によってTDMとGMM産生量が逆相関する現象を非常によく説明する。更に、この現象が菌の宿主への感染において某かの役割を果たすか、換言すればTDMとGMMで宿主細胞に対する生物活性が異なるか否かを、マクロファージにおけるnitricoxide(NO)の誘導能をみる事によって検討した。その結果、TDMは強くNOを誘導できるが、GMMはほとんど出来ないこと、またこれはinducible mitric oxide synthaseの誘導に依存する事が明らかとなり、TDMとGMMの交代現象は一種の適応現象であることが考えられた。
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