ジテルペン化合物は(炭素数20)、香料、医薬・医薬中間体、植物ホルモンなど重要な化合物を含んでいる。これら化合物の生合成の第一段階は、環化酵素が直鎖状の基質であるゲラニルゲラニル2 リン酸の末端オレフィンをプロトン化、または2 リン酸を脱離することによってカルボカチオンを生成することから始まる。最終的にカルボカチオンが捕捉中性化されるまで、各環化酵素特有のカチオン中間体を経る反応が順次進行し、多種多様なイソプレノイド骨格へと導かれる。反応の第一段階が共通であるにもかかわらず、最終的に多様な骨格を持つ化合物が生成する事実は、環化酵素の特定アミノ酸残基のみが反応に関与するのではなく、酵素全体のアミノ酸残基が種々のカルボカチオン中間体の生成に関与することを示唆する。従って、これら環化酵素の構造機能相関解析を行うことにより、任意の段階でカルボカチオンが捕捉中性化された化合物の生成を制御できる可能性がある。しかし環化酵素に関しては、真核生物を材料に用いた場合、酵素調製が難しいことなどから一部の酵素を除いて殆ど解析が行われていない。このような背景下、筆者は原核生物と真核生物起源のイソプレノイド生合成遺伝子を多数取得しており、今回、(1)お米由来の2 つのent-copalyl diphosphate 生合成酵素、(2)原核生物のNocardia 属放線菌が生産するジテルペン化合物、brasilicardin A 生合成遺伝子クラスターの取得、(3)原核生物のStreptomyces 属放線菌により生産されるテトラテルペン化合物(KS-505a)生合成遺伝子クラスターの取得とこれらの機能解析を行った。
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