研究概要 |
当初の計画に従い平成19年度では、ターゲットとする先天性胆汁酸代謝異常症患者尿中に存在が予測された一連の異常胆汁酸多重抱合体の標品合成を行なった(データ未公表)。さらに合成標品を用いて、LC-ESI/MS分析の予備実験として、蒸発光散乱検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ELSD)によるプレリミナリーな分析条件の検討を行ない、そのクロマト挙動を明らかにした(現在、学術誌に投稿準備中)。またこの課程において、ヒトには全く存在していない3α,15α-Dihydroxy-5β-cholanoic acidのタウリン抱合体がオーストラリア産の有袋類であるウォンバット胆汁中に主要成分として存在していることを明らかにし、J. Lipid Res.誌(48巻,2682-2692(2007).)に報告した。さらに現在、肝障害を併発した先天性代謝異常症(ニーマン・ピック病C_1型)の患者尿(鳥取大学・医学部から供与)中に、3β,7β-dihydroxy-5-cholenoic acidの3-硫酸,7-N-アセチルグルコサミン,24-タウリン(またはグリシン)抱合体が、極めて顕著な量で排泄されることを明らかにし、当該化合物の水解、脱抱合操作を必要としない高感度・高選択的なLC-ESI/MSによる定量法の開発を行なっている。引き続き、平成20年度中に定量法を確立すると共に、分析検体数を増やして当該疾患の化学診断法の開発へ繋げていきたい。
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