パラオ共和国の海水湖の堆積物より採取された微生物の培養液から単離されたウルクタープルスタチンAはヒトがん細胞に対して細胞毒性を有するペプチド性化合物で、強力なテロメラーゼ阻害剤であるテロメスタチンの関連化合物である。ウルクタープルスタチンAを標的化合物としてフルオラスタグ法での効率的な全合成を目的に検討を行った。この合成では、連続する5つのアゾール環の構築と閉環反応が問題となる。今回、ビスオキサゾールチオアミド体と2'-ブロモアセチルビスアゾール体のHantzsch法によるチアゾール環の形成を伴う連結によってペンタアゾール骨格を構築後、閉環するという合成計画を基礎として検討した。まず、ビスオキサゾールチオアミド体は、フルオラスBoc基を用いて、ヒドロキシペプチドからオキサゾリン環を経由したオキサゾール環の変換反応を利用して調製した。また、2'-ブロモアセチルビスアゾール体はフルオラスTIPS基を乳酸アミドのヒドロキシ基に導入し、Hantzsch法によるチアゾール環の導入、ついで、フェニルセリンを縮合して得られたヒドロキシペプチドのRobinson-Gabriel環化によって5-フェニルオキサゾール環を構築することによって合成した。このようにして得られたビスオキサゾールチオアミド体と2'-ブロモアセチルビスアゾール体を改良Hantzsch法の条件でカップリングすると、対応するペンタアゾールエステル体を高収率で与えた。さらにペンタアゾールエステルをけん化後、別途合成したジペプチド(D-allo-Ile-Ala-OtBu)とBOPを縮合剤にしてペプチド結合形成反応を行うこどで、全てのシーケンスを含む直鎖状ペプチドを好収率で得ることができた。
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