中枢神経系におけるグルタミン酸濃度は、トランスポーターによって厳密に制御されている。濃度制御は、主にNa+イオン依存性グルタミン酸トランスポーター(EAAT)が担っているが、それ以外にも中性アミノ酸(グルタミン・シスチン・セリンなど)を介した細胞内外のグルタミン酸濃度制御が知られている。EAATが圧倒的に取込優先で細胞外濃度を減少させるのに対して、グルタミントランスポーターASCTやグルタミン酸・シスチン交換体xCTは、細胞内外のアミノ酸を交換するヘテロエクスチェンジという形式をとり、細胞外のアミノ酸濃度に応じて双方向的にグルタミン酸を輸送する。取込と排出の基質認識について調べるため、グルタミン酸誘導体およびシスチン誘導体の合成を行った。xCTにおいては、シスチンのS原子を炭素で置換したdiaminosuberic acid誘導体がグルタミと酸排出のみならず取込も阻害することから、基質認識部位は共通であると考えられる。 Diaminosuberic acid誘導体のアミノ置換基は阻害に必須であり、嵩高く疎水性が高い置換基の方が活性が高いことがわかった。さらに炭素鎖が一つ短いdiaminopimelic acid誘導体にも強いxCT阻害活性があった。炭素鎖に二重く結合を導入することで、代謝型グルタミン酸受容体への作用を軽減でき、選択性は既存の阻害剤4-CPG(4-carboxyphenylglycine)よりも優れていることもわかった。今回の結果を基に、置換基の最適化を図るとともに、最も選択性に優れている異性体の選択的合成に取り組んでいる。
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