1.試薬の改良 昨年度までに開発した試薬の反応性をさらに増強させるため、試薬の改変を行った。核酸はリン酸ジエステル結合を多数有しているため、負電荷を帯びている。そこで、標識試薬側に正電荷を帯びたグアニジンを付加させ、核酸側との間で生ずる静電気的な相互作用によって、より低濃度でも反応が進行することを期待した。またこのグアニジノ基は平面構造を有していることから、核酸塩基へのスタッキング効果も加わり、標識試薬の親和性がさらに増強されると考えた。グアニジノ基は、認識部位の芳香族基とビオチンとの間のリンカーIIに導入し、[アミノオキシ基]-リンカーI-[芳香族基]-[グアニジノ基]-[ビオチン]を合成した。 2.新型試薬の反応性の解析 グアニジノ基を導入した新型試薬は水溶液に可溶であったことから、DMSOなどの有機溶媒が不要となった。昨年度と同様に、合成RNAに対する標識実験を行った結果、グアニジノ基と芳香族基を有した新型試薬は、市販品や芳香族基のみを有した試薬よりも高い反応性を示すことが明らかとなった。 3.アレイを用いた解析 細胞より回収したmicroRNAを、開発した試薬で簡便に標識する最適な標識プロトコルを構築するため、2種類のRNAを合成した。それぞれに相補的なDNAを基板上にスポットしたDNAチップを作製して、RNAの酸化、標識、ハイブリダイゼーション、解析までを行った。その結果、精製のステップを入れること無く、DNAチップの解析までを進める方法を見出した。この結果を受け、大腸由来のtotalRNAを標識し、DNAチップによる解析を行い、これまでの標識方法と活性を比較した。
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