研究概要 |
1.東京湾内湾域で操業するあなご筒漁業によって混獲されたヌタウナギ標本から以下のことが明らかとなった。 (1)全長とGSI(生殖腺重量指数=生殖腺重量/体重×100)の関係から雌雄の成熟開始全長を全長35cmと推定し,月別のGSIの変化から産卵期を9,10月と推定した。 (2)東京湾内湾域では,全長45cm以上の個体は,雄個体が周年採集されるのに対して,雌個体は7〜9月にほとんど採集されない。一方,外湾域では7〜9月にも採集されていることから,外湾域への産卵回遊仮説を提唱した。 (3)既存のあなご筒実験データから,標本採集具としてのあなご筒の特性,特にサイズ選択性を明らかにした。 2.小田原漁協所属の筒漁船に依頼して,相模湾におけるクロヌタウナギ標本を定期的に入手して生物測定と生殖腺の観察を行った。 (1)全長とGSIの関係から,雌雄の成熟開始全長をそれぞれ全長35cmと42cmと推定した。 (2)生殖腺の発達段階別の割合から,産卵に貢献する雌は全長47cm以上と推定した。 (3)全長47cm以上の雌個体のGSI季節変化,および産卵直前あるいは直後の生殖腺を持つ個体の出現時期から,産卵期は9,10月と推定した。 3.東京湾におけるあなご筒漁船の操業日誌から,産卵期と考えられる9,10月にヌタウナギが採集された海域として,内湾域では走水沖から海底渓谷で外湾域につながる海域を産卵海域と推定した. 以上の結果により,ヌタウナギとクロヌタウナギの産卵に関する生活史の基本的な事項が把握され,さらに再生産機構の詳細を調べる調査を進めることが可能となった。
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