研究概要 |
(1)東京湾と相模湾で採集されたヌタウナギの標本から,未成熟な全長35cm以下の標本を抜き出して日別の全長組成を作成したところ,いくつかのモードを見出した。これらのモードを時期別に並べると成長に応じて増加していることから,年齢群を表すと考えた。 (2)このモードを年齢群に分けて,10月の産卵の5ヶ月後の2月を孵化月として決めた各個体の日齢と全長から,非線形最小二乗法を用いて, von Bertalannfyの成長式を求めた。この成長式の日齢0日における全長は,発達した卵の長径から推定した全長とほぼ等しく,ヌタウナギが孵化後に変態することがなく,親と同じ体型で孵化することと符合する。 (3)成長式から,成熟開始の全長35cmに達するのに4年が必要であり,また月別の腹腔内卵の発達過程と生殖腺重量指数GSI(生殖腺重量/体重×100)の変化から,産卵までの卵の発達にはほぼ1年弱を要する。このために,ヌタウナギにおける初産年齢は5歳と推定した。 (4)また東京湾ではヌタウナギは,内径13.5mmの水抜き穴を持つあなご筒では,全長35cm以上が採集されている。このことから,漁獲対象となる年齢は, 4歳と推定された。 (5)産卵期における全長35cm以上の雌個体について,生殖腺を観察したところ,必ずしも発達した卵をもたない個体が存在する。このことから,必ずしも毎年産卵しているとは限らないと考えられた。 (6)小田原漁協所属の筒漁船の操業日誌を入手し,クロヌタウナギを対象とする漁業の開始初期からの日別の漁獲量と使用漁具数の資料を得てデータベース化した。
|