研究概要 |
ヌタウナギは,成長が遅いことで初産年齢が5歳と遅い上に,1回の産卵個数が60個にも満たない大卵少産の再生産戦略をとっているだけでなく産卵が毎年でない可能性がある。これらのことはヌタウナギが十分な増殖能力を持たないことを意味し,漁獲によって減少した場合にそれを補う増殖が不可能となり,加入乱獲に陥っていることが明らかとなった。 聞き取りなどの情報収集によって,韓国系の商社が韓国輸出向けに日本沿岸でヌタウナギの集荷が開始された場合に,複数漁船による操業を始めた後1年ないし2年で漁獲量が急激に減少して乱獲となっている実態をいくつかの地域で把握した。例えば島根県の石見地区,島根県石見地区,石川県すずし漁協と石川とぎ漁協,福岡県玄海灘,福井県敦賀湾,京都府栗田湾,東京湾横浜市漁協,千葉県館山湾など。 小田原市漁協所属の筒漁船の操業日誌(日別の漁場位置と漁獲量の情報)を用いた分析から,相模湾におけるクロヌタウナギの漁場の分布を把握できた。また,毎漁期とも漁期始めから単位漁獲努力量あたりの漁獲量が急激に減少していることから,わずか1隻の操業によっても,限られた漁場内のクロヌタウナギの資源を減少させていることが明らかとなった。そしてDeLury法を用いた解析により漁獲能率の推定が可能であることを予備的な解析により確認した。さらに,他の海域と同様に,相模湾でも毎漁期ごとにクロヌタウナギの資源量が減少している傾向が認められた。
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