研究概要 |
河川掘削によって出現した揖斐川中流域の6個体群(平成12年掘削、13年掘削、14年掘削、15年掘削、16年掘削、17年掘削,18年掘削,20年掘削)の個体数について、4月から9月にかけて毎月個体数の調査を行った.本年度は大きな出水が9月上旬にあった.徳山ダムの建設による影響によって,河川内の撹乱が殆ど確認されなかった.しかし,ダムからの放流が何回か行われているためか,掘削域に出現した個体群の減少が観察されなかった.この観察結果とともに,本年度は揖斐川の集水域の降雨量と連続降雨による河川の増水について平成12年度から年度ごとに相関を取り,解析を行った.その結果,徳山ダムが急激な放流を押さえていたことがわかり,洪水には非常に効果的な防御をしていることが示された.しかし,増水が観察されないわけではなく,ある程度の増水が引き起こされ,撹乱が起こっていることが示された.このため,徳山ダムの建設は環境の変動に大きな影響を及ぼすわけではなく,急激なカタストロフを防ぐ可能性が示された. しかし,本年度は昨年度と同様,自然個体群に大きな変化がもたらされた.徳山ダムが満水状態となったため,揖斐川の流量は以前と同様になったと考えられるにもかかわらず,河口域では干満潮による浸食が進んでいた.このため,干潮区域における.浸食は堤防のすぐ横までおこっていた.このため河口域の自然個体群では生息域が大幅に狭められ,個体数が激減していた.昨年度末には間満潮による侵食で裸地が形成されたため個体数が200個体までに増加していたにもかかわらず,本年度は20個体までに減少していた.大きな建設工事は予測できない環境変化を及ぼす可能性が示された.
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