研究概要 |
河川掘削によって出現した揖斐川中流域の9個体群の個体数について、4月から9月にかけて毎月個体数の調査を行った.これまでの調査の2年間では降雨が少ない状態が続いたため,遷移が進行し,タコノアシ個体群の激減が観測されていた.しかし21年度は出水が確認され,上流域では降雨による大きな水位変動が引き起こされた.しかし,徳山ダムによる水位調整が行われ,過去に引き起こされたような大きな大出水が認められなかった.また,水位の変動はいくらか見られたものの,攪乱に足るような大きな出水が無かった.このため,掘削によって,形成された個体群では個体数の減少が明らかとなった.これはこれまでに観測された個体数の減少よりも大きな減少曲線を示している.しかし,平成19年度に形成された個体群の個体数は非常に大きく,減少も少なかった. 徳山ダムでは,河川の攪乱の低下による河川環境の変動を憂慮しており,平成20年度から,フラッシュ出水を実験的に行っている.フラッシュ出水は4月から5月にかけ,実験的に行っており,このことが平成19年度個体群の維持に影響を及ぼしている可能性がある.しかし,このようなフラッシュはこれまで引き起こされてきた自然霍乱と異なり,比較的穏やかな出水である.このため,遷移がすでに進行した個体群の攪乱を引き起こすほど大きな力が無いと考えられる.従って,比較的新しく掘削され,遷移がそれほど進行していない,H19年度掘削個体群は攪乱が引き起こされ,タコノアシの生育環境が維持されたと考えられる. このようなことから,ダム建設は大きな攪乱を引き起こすことが内河川環境を生みだすことが示唆された.しかし,実験的なフラッシュ出水はある程度の河川攪乱を維持するのに役立つ可能性もあることでダムの運用面で河川環境の維持に役立てる可能性もあることが示された.
|