本年度4月に韓国南部において木浦を中心としてムアン、ジンド、カンジン湾までの干潟調査を行った。この地方からは人体有害異形吸虫症などが報告されているが、干潟には吸虫類の中間宿主となる巻貝類が種類数、個体数とも多く生息していた。セマングムと比較しても巻貝類の多様性は高く、貴重な干潟が多く存在していると思われる。しかし、現在は埋め立ての進行は著しく、特に木浦市では既に多くの干潟が消失している。カンジン湾は希少種が生息している事が知られているが、かっては韓国各地の干潟に見られた種も現在はこの周辺にだけ残っていることを示しており、韓国でも日本と同様に、干潟の環境は貝類の生存にとって厳しくなっていると思われた。 日本においては浜田市から米子市までの山陰地方の巻貝類の調査を行ったが、この地方の海岸の環境は瀬戸内海、九州、太平洋岸とは大きく異なっており、主に崖、磯、浜で成り立っており、干潟はほとんど形成されていない。海水の流速と、河川勾配が大きいことが大きく関係していると思われる。そのためかウミニナ科、オニノツノガイ科の巻貝類はほとんど見られず、ホソウミニナのみが見られたが、本種の分布は非常に限られていた。
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