研究概要 |
オガサワラノスリButeo buteo toyoshimaiはアジア大陸に広く分布するノスリB. buteoの小笠原産固有亜種である.生存数の少なさから現在、国の天然記念物,種の保存法に基づく国内希少野生動植物種,レッドデータリストの中での絶滅危惧種等に指定されている。最近小笠原諸島は世界自然遺産候補地として注目を浴びているが,反面、開発,観光等による環境の変化は小笠原に棲む猛禽類であるオガサワラノスリにとって非意図的な繁殖妨害などあまり好ましくない状況を生じさせつつある。主に報告者を初めとする首都大学の研究者によってオガサワラノスリの生態学的研究が実施されて来た。その結果、現在生息密度を含め多くのことが明らかにされている。しかしそれらは父島の個体群について行われたものがほとんどで,母島の個体群についてはその生息数や繁殖成績などほとんど判っていない。オガサワラノスリの保全のためにも母島個体群の状況を調べることは急を要している。そこで、本研究において母島個体群の実態調査に着手した。19年度は,母島南部地域に生息するオガサワラノスリの分布や生息数について調査を実施した。現在までのところ,従来同地域に生息すると考えられていた数よりも多い数(密度的には父島とおなじレベル)が認められている。今までの調査を元に,今後個体数推定の精度を上げつつ,調査区域を母島全体に拡充して行く予定である。 なお本研究は平成19・20年度研究として計画・申請され、採択されたものである。しかし交付決定が平成19年10月末でその通知が届いたのは11月になってからであった。その結果調査実施の時間的余裕があまりなく,19年度作業としては2年度目の平成20年度実施調査の予備的調査および文献等情報収集が主なものとなった。
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