研究概要 |
オガサワラノスリButeo buteo toyoshimaiはアジア大陸に広く分布するノスリB.buteoの小笠原産固有亜種である.生存数の少なさから現在、国の天然記念物,種の保存法に基づく国内希少生動植物種,レッドデータリストの中での絶滅危惧種等に指定されている。最近小笠原諸島は世界自然遺産候補地として注目を浴びている。しかしその反面、開発,観光等による環境の変化は小笠原に棲む猛禽類であるオガサワラノスリにとって非意図的な繁殖妨害などあまり好ましくない状況を生じさせつつある。オガサワラノスリの生態学的研究は報告者を初めとする首都大学の研究者によって主に実施されて来た。その結果、現在生息密度を含め多くのことが明らかにきれそいる。しかしそれらは父島の個体群について行われたものがほとんどで,母島の個体群についてはその生息数や繁殖成績などほとんど判っていない。オガサワラノスリの保全のためには母島個体群の状況を調べることは急を要している。そこで、本耕究において母島個体群の実態調査に着手した。20年度は、オガサワラノスリの分布や生息数について母島北部地域を中心に生昼する個体群を主な対象として調査を実施した。現在までのところ,従来同地域に生息すると考えられていた数よりも多い数が認められた。19年度の結果と合わせると母島全体では一般的に考えられていた今までの数よりも大分多い20を超える番が生息することが明らかになってきた。これは密度的に父島とおなじレベルのオガサワラノスリが母島にも生息することを示している。しかし調査は未だ途上にあり、やっとおおよその生息密度が判明してきたところであり、調査期間の関係から、研究目的の一つである詳しい繁殖成績の調査も充分行えていない。今後個体数推定の精度を上げつつ、繁殖成績等のデータを収集する必要がある。
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