研究課題
照葉樹林構成樹種実生14種を林床光環境を模した3毅階の被陰区(相対照度6、16、44%)、夏と冬のギャップ形成を模した3段階被陰から裸地への移動という変動光環境(夏、冬open)の9処理のもとで栽培し、個体成長を調べた。被陰区の相対成長速度(RGR)は次第に頭打ちになるが、明るいほど大きかった。44%区でRGRが大きいのはイスノキ、クスノキなど、小さいのはウバメガシ、アカガシなどであった。RGRの決定要因は、44%区では純同化速度であった。光合成速度が高いこととほぼ同義であり、生理的な活性の高さが成長に貢献した。一方、6%区では個体重あたりの葉重、および単位重あたり葉面積がRGRと正の相関を持ち、薄い葉をたくさんつけること、つまり形態的要素が成長速度の決定因となった。16%は生理的能力と形態的要素の両方がRGRと相関を持った。夏openではRGR決定要因が被陰区とほとんど変わらなかったが、冬openでは、すべて、RGR決定要因は純同化速度であった。これは、低温下で強光阻害を受けて葉が落ち、新たな展開葉が明るい環境に順化した光合成能力を示したことによる。冬openでは被陰区よりもRGRが低く、逆に夏openでは、被陰区の個体とRGRが同等以上で、暗い処理区に由来するものほど被陰区よりもRGRが大きくなった。44%区のRGRは各樹種の成長ポテンシャルと考えられるが、RGRの種の順位は、その他の処理区でもほぼ保存されていた。常緑広葉樹林はギャップ形成が更新の引き金となるが、実生の段階では、ギャップが形成されて成長が促進されるのは、暗い林床で夏にギャップができた場合に限られた。成長速度の種の順位性は環境によらず保存されていて森林更新の過程は確率的であることが示唆された。以上、時空間的に不均一な林床光環境下で、実生が森林更新に果たす役割を現実的な精度で明らかにすることができた。
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