本研究では、ロシア・ソ連の全国境を地域的に八区分(フィンランド、西北部、西部、カフカース、中央アジア、新彊、モンゴル、極東)、時期的に四区分(国境形成、戦間期、戦時国境縮小・拡大期、戦後)し、特に国境地域に居住する民族問題に焦点を絞りつつ、国境隣接国との歴史的関係、国境成立にいたる背景、地勢学的特徴、民族構成、宗教・経済関係、国境線をめぐる紛争、国境変動の要因と変動過程、ソ連全体の安全保障的観点から判断される当該地域の持つ軍事的意味等の諸問題について個別的に検討を加えるとともに、国境警備隊の整備や税関の機能等全国的な国境統治の実態を解明することを目的とするが、本年度は前年まとめたモンゴル国境について著作を刊行した。次のターゲットである西部国境地域すなわちウクライナ、白ロシア地方及びそれと国境を接する、ポーランド、ルーマニアとソ連の関係及び極東地域とそれと対峙する満洲との関係に関する史料をかなり収集することができた。2009年3月にモスクワの旧ソ連軍史料館において、国境地区に関するファイルがかなり存在していることが判明したが、なかには依然として公開されていないものも存在し、今後の調査方針についてもよく検討する必要がある。同時に、相当数の関連書籍を収集することができた。
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