本年度の研究成果は以下に列挙するとおりである。 1昨年度、課題として明らかになった理論的枠組みの再検討のために、オーストラリア学会のシンポジウムとして、オーストラリアの研究者と国内の研究者を招き、移民制限(白豪主義)の問題とオーストラリアにおけるスポーツの問題と白人性の関連を検討した。そこでは、国家のアイデンティティを象徴的にあらわす位相の重要性が確認された。 2上記の問題のうちスポーツの問題に関して、オーストラリアにおける人種とスポーツの関連を最近の研究動向を踏まえて、スポーツ史学会のシンポジウムで報告した。報告にはグローバルな人種問題の展開に関する質問などが相次ぎ、建設的な意見の交換が出来た。 3啓蒙思想、公的領域の問題などの理論的課題の克服に取り組み、来年度には一定の成果を示すことができる目途が立った。しかし、白豪主義の解体については、まだ、準備段階にとどまっている。 42の報告および5の論文に関連して、オーストラリアにおいて文献調査を行った。とりわけ、先住民のスポーツ参加に関して、記憶の創造にかかわる文献を収集した。 5昨年度の課題であったホームページの作成は、耐震補強のための移転準備があり、作成できなかったが、代わりにヘンリー・パークスの思想を検討することで、白豪主義思想と現在の新自由主義の関連性を追及した。この成果はメルボルンの国際学会で報告予定であったが、事故のために果たせず、論文として『パブリック・ヒストリー』に掲載した。
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