本研究の目的は、従来から取り組んできた白人性研究の理論的背景やその射程に関する研究を基にして、オーストラリアという特定の地域で、白人性に関する理論的枠組みを、歴史学的に検証することである。 その理論的枠組みは、白人性を身体に規定される白人性(危機的白人性)と、人類の標準を志向する普遍的な白人性という、白人性に関する二つの理念型と、その混合物としての4つの歴史的な形態を想定し、それによって人種、ジェンダー、階級などの差異と差別によって規定される社会構造を理解し、説明しようとする試みであった。 この理論的な枠組みを、オーストラリアにおける具体的な事例、反中国人運動、白豪主義、連邦運動、ヨーロッパ系エスニックのアイデンティティ、多文化主義(スポーツとメディア)などを通じて、順次検証するのがこの研究の主な内容である。
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