今年度は、2月から3月にかけてツバル、およびニュージーランドにおいてフィールドワークを実施した。この時期は、ツバルでは一年の中で最も海面が高くなる時期であり、今回は首都フナフチで海面が2.9mの上昇となった日に地中から海水が湧き出る現場を目撃することが出来た。しかし人びとは、こうした自然被害に対して驚くこともなく、通常の生活を送っている現状が存在する。人びとは、こうした自然破壊をファイファインガ・ファカ・ツバル(ツバル流の生活の仕方)として処理しているという点が、今回の調査によって明らかになった。一方社会的環境破壊の問題としてクローズアップされているゴミ問題の調査も行った。首都のフナフチでは、収集したゴミは島の北の端に運ばれ積み上げられるが、年々増加の一途をたどっている。しかしそれらのゴミはときどき「野焼き」することで最を減らしている現状が明らかになった。ところで、ツバルは、自然環境破壊による環境難民の受け入れをニュージーランドなどに要請したが、環境難民という概念は受け入れられず、労働移民としてのみ受け入れが行われているのが現状である。今年度は、ツバルからの帰路、ニュージーランドに立ち寄り、ツバルからの移民が多く暮らしているオークランド市西部のマセー(Messey)地区で調査を実施し、移住者の実態について情報を集めた。 一方国内においては、オセアニア研究者と研究打ち合わせを実施し、海面上昇とツバルの「洪水被害」との関連について意見交換を行った。また、図書を購入はしなかったが、環境省のツバル調査を踏まえた支援活動報告書や、ツバルの洪水被害と海面上昇の関連を論じた小林泉、岡山俊直、Yamano et al.らの論考、またSOPACの資料などを収集することができた。
|