研究概要 |
今年度は、9月にニューヨークのコロンビア大学の図書館で、ツバル及び同地域の環境破壊に関する文献資料を調査した。まず、Butler Libraryで、Lewis著Sea-level rise : Some implications for Tuvalu(1989). Maragos, Baines, and Beveridge著Tropical Cyclone Bebe creates a new land formation on Funafuti Atoll(1973)などを通して、台風による自然環境破壊の情報を収集した。また同図書館で、McQuarrie著のStrategic Atolls : Tuvalu and the Second World War.(1994)を読み、この著書からは、ツバルで現在洪水被害が生じている場所と第二次大戦時にアメリカ軍が滑走路建設のために採掘したボローピットの位置とが重なっていることの証拠が得られた。さらに、Geology Libraryで、Royal Society of London編纂のThe atoll of Funafuti(1904)を読むことが出来た。この中に1986年のフナフチ探検に関する報告があり、その段階でフナフチ内陸部は満潮時には海水が湧き出てくることが分かった。以上の文献調査が示していることは、現在ツバルで生じている「洪水現象」は、ここ10年ほどの間に始まったわけではないということであり、温暖化による海面上昇とは直接の関係を持たないということである。さらに、近年洪水被害が叫ばれるようになったということは、人間の手の入ってなかった「洪水発生地域」に生活圏が広がったというYamanoらの議論を裏付ける結果ともなっている。 国内においては、環境破壊の日常を暮らす人々の生活戦術について議論などを行い、ツバルでのフィールドワークから得たツバルの伝統概念についてのさらなる検討を行った。
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