本年度は、先行研究のレビューと中国・韓国へのフィールドワークを中心に研究活動を実施した。まず、研究代表者、研究協力者の双方が、それぞれの専門分野を中心に1990年代以降の中国・朝鮮半島研究をレビューした。その結果、依然として中国・韓国、中国・北朝鮮、南北関係の二者関係研究が主流となっていることが明らかとなった。1992年8月の中韓国交正常化および2000年6月の南北首脳会談の開催によって、これら三者の関係は構造的な転換をみせており、東アジアの国際情勢を正しく理解するには、中国・韓国・北朝鮮を3つのマルチプレーヤーの関係として理解しようとする研究が求められている。また、中国・韓国へのフィールドワークについては、2007年11月に中国北京市と韓国ソウル市、2008年3月に北京市、ソウル市、プサン市で調査を実施した。とくにこの1年間、中国で第2期胡錦濤政権が、また韓国では10年ぶりの保守政権である李明博政権がスタートしており、こうした政治動向を念頭におきながら、北京大学、中国共産党中央党校、中央民族大学、中国外交部関係者、延世大学、ソウル大学、韓国通商外交部関係者、東西大学などを訪問し、本研究テーマにかかわる意見交換を実施した。また、今後の研究情報を共有化していくために、当該研究分野の人的ネットワーク構築していくための話し合いを行い、少なくとも日中韓の間で情報の連携システムを構築していくことの必要性を再確認した。
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