本研究は、中国と朝鮮半島をとりまく政治力学を、より構造的に理解するための実証分析と研究手法の再検討を目的としており、研究期間の2年目にあたる平成20年度は、中国、台湾、韓国へのヒアリング調査、先行研究のレビュー、個別研究のテーマ設定の確定作業を中心に研究活動を実施した。 中国での調査では北京大学、中国共産党中央党校などを訪問し、1992年の中韓国交正常化が中国・朝鮮半島関係に与えた政治的意義について意見交換、資料収集を行った。その際、中国と韓国の国交正常化は、台湾と韓国の断交をもたらしており、中国・朝鮮半島問題を構造的に理解するには台湾で資料収集が必要との認識を深め、台湾での資料収集を実施した。韓国でのフィールドワークでは、延世大学などを訪問し、近年の中韓関係と南北関係をテーマに意見交換を行った。意見交換のなかで、韓国内では近年の中韓関係が北朝鮮問題をめぐってあまりうまくいっていないという認識が強いこと、また韓国内において北朝鮮政策に様々な意見が存在しており、「南南葛藤」といわれるような状況が存在しているなどの知見を得ることができた。 先行研究については各研究者の専門分野を中心に、2000年以降の中国・朝鮮半島研究をレビューしたが、こうした2年間の研究活動を総括し、最終年度では中国・韓国・北朝鮮に、台湾を加えた4つのファクターを重層的にとらえることで、東アジアに存在する複雑な政治力学を構造的に解明していく方針を決定した。
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